酒器のコレクション~その33 黄瀬戸盃

 酒の器、いわゆるぐい呑み好きにとって垂涎の一品といえば桃山時代の黄瀬戸の六角盃に帰するといっても過言ではないが、実際に手にすることはひとつの盃に一財産を傾ける覚悟でも固めなければなかなか実現する話ではない。それどころか昨今、黄瀬戸の盃そのものが数少なくなかなかお目にかからない。そんななかで出逢ったのがこの黄瀬戸の小盃。もともと岐阜県の陶芸家の旧蔵品である。くだんのギャラリーでこれを見つけたとき、私は即座に手に取って「買います。」と宣言したものだ。小ぶりながらもまごうことなき桃山(時代)黄瀬戸である。さらには高台が碁笥底で、口縁に少々のキズがあったため、さっそく金直しを依頼したのだが数ヶ月後にできてきた直しはほんの一箇所のみ。あとは透明の漆直しのままである。「このほうが騒がしくないかと思って。」とは修復家の言(げん)である。「ま、いいか。」と愛用しはじめたのだが、あるとき陶芸家の内田鋼一さんたちと呑んでいて、「やっぱり、そこは全体に直したほうがいい。」といわれ再び直しにだした。図らずも昨日、直ってきたこの盃をみて、「よくなったなあ。」と得心。口縁の金直しが漏れ出(いづ)る月影のようで惚れ直した次第。偶然、やってきたくだんの友人宅に押しかけ、さきほどまで痛飲することとなった。声にはださないものの、「おまえさん、よ(良)うなったなあ。」と心の中で語りかけるさまは、もし聞こえていたならばさぞかし奇妙な光景であったに違いない。
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  <黄瀬戸 盃 桃山時代>  

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  <同 高台>

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